ルーシーのアメリカノート その3 天才デザイナーとの出会い

そういうわけで恋するあたしは天性の美しさにさらにみがきがかかり、ある日原宿を歩いてたらスカウトされちゃったの。
(「をいをい!いつ日本へ行ったとですかー?」byひらの)

「あなた、まるでビーグル犬みたいにかわいいわね。モデルにならない?」
「あ、やっぱり?」
って、あたし思ったわ。あたしみたいな超美少女って、どんな雑踏の中でもどうしても目立っちゃうのよね、これが「オーラ」とか「カリスマ」とか「スター性」って呼ばれるものなのかしら・・

でもあたし、スカウトっていうのは危険もいっぱいなことを知ってるから、その時は名刺だけもらって個人的に調査してみたの。多忙なロバートの手をわずらわすのは遠慮して、ヒマそうにしてる下っ端メイドのアキコに調べさせたのよね。
そしたら、スカウトしたご本人って日本の最先端を突っ走る天才デザイナー兼お針子、マダム・エイチ(本名「ほんまちゃん」。神奈川の一等地に製作スタジオを持っている)だったのよー。

マダム・エイチはその過激にしてかつはんなりとした才能を、「カンサイヤマモトとハナエモリを足して0.005で割ったようだ」と評される、まさしくライジング・サンな存在。そんなヒトにスカウトされちゃって、あたし自分の美しさと存在感が我ながら恐ろしくなったわ・・

でも、そこはホラ、スターの星に生まれついちゃってるあたしだから、さりげなくプロモーション・ポスターなんか作って、「オファー、お受けします」のメッセージを添えて、奥ゆかしくマダム・エイチに送り届けたの。
ちなみにこれがそのプロモーション・ポスターよ。


ね、ただカワイイだけじゃない、ミステリアスな瞳と実力派の鼻にゾクッとくるでしょ?
(「頑固で出歯亀ってゆーだけでしょー?」byひらの)
そしてなんといっても全体を包む白い色調が、あたしの清潔感いっぱいなイメージをきっちり表現してるわよねえ。
(「それならうんp食べないでくれますー」byひらの)

でね、あたしのモデルデビューは、マダム・エイチのアメリカ上陸記念ファッションショーっていう大舞台で実現したのよ。こんな幸運も、やっぱりあたしらしい、っていうのかしらね・・

ロサンジェルスで行われたショーでは、すでにトップモデルの地位にある日本のイケメン、Be & Gooと共演したわ。
Beは深遠高大な思索型の美青年で、フクザツな個性と予測不可能な行動が女心をくすぐるタイプ。でも、彼の女の子のお好みは「とにかくデカクてダイナマイトバディなコ♪」なんだそうで、ペティートなあたしはちょっと悲しいのよね。
Gooは子どものころはとっつあんボウヤっぽかったんだけど、オトナになった今では永遠のガキ大将、大胆でちょっとワル、それなのにナイーブな風貌が魅力だわ。

それからね、ハリウッドで今最も映画出演料が高いって言われてる女優にしてイリュージョンスターのジュリーが、特別出演したの。あたし、自分の美しさには自信あるけど、ジュリーには負けることがあるかもしれない・・・ってちょっと本気で思ったわよ。

これがショーでの「クリスマス・オールスター・パレード」の様子よ。テーマは「レッド・ノーズド・レインディアー」
(「赤鼻のトナカイさんね」byひらの)

上からGoo、そしてBe。さすが、着こなしもイタについてるわ。

圧倒的なイグジスタンス(存在感)のジュリー。スターはやっぱり舞台装置も特別よ。

これがあたし・・・ 歩き方も優雅で堂々としてるわ。(「どこがぢゃ」byひらの)

それからアメリカンパラダイスなデザインもさらりと着こなして・・・(「目エつぶるなよ!」byひらの)


トリには日本の伝統衣装「キモノ」とあたしの輝く笑顔で華やかにしめくくったわ。(「そのミケンのしわ、なんとかなりませんか・・」byひらの)


もう、会場は総立ちの観客と鳴り止まぬ拍手よ。あの押し寄せる歓呼と喝采の波動、今でもムネに手を当てたら、震えるようによみがえってくるの・・

ところでみなさん、あたしの体に添えられた手がなんとなく気になっていらっしゃると思うの。
これはね、ボディガードの手なのよ。あたしのあまりの魅力に正気を失う観客が続出する・・という当然の予想から、第一級のボディガードを雇うことにしたのよ。
それがね、リハーサルで顔合わせしてビックリしたんだけど、なんとロバートだったの! ロバートって、CIAの工作員だけでなく、大統領級のVIPから声がかかるボディガードとしても有能だったんだわ・・

そう、そうなの。みなさんがもうお気づきになったように、あのホイットニー・ヒューストンとケビン・コスナーの大ヒット映画「ボディガード」って、あたしとロバートがモデルなの。これ、ハリウッドでは常識にして伝説的な歴史的事実なのよ・・
(「あ、あの、そんなに簡単に時空を超えないでくれますー? それにボブの手は初めてワンコ服着て大コーフンなあんたを撮影のあいだ取り押さえてたためでしょーが」byひらの)

そしてね、あたし自分の鋭さがほんとに恐いんだけど、マダム・エイチって、じつは国際二重スパイでもあるのよ。
あの華やかなショーの合い間に、世界を揺るがす重大な機密情報の授受をロバートと完遂したにちがいない、いえ、そうに決まってる、あたし、その暗号的な会話を交わす二人を確かに目撃した、そう思うわ・・


(2005.12.16アメリカ時間)



ショッピング等における心の「じゃんかよ」化および本来の自分についての考察

うふ、ふふふふ・・・どうだこのタイトル。ルーシーなどというコムスメ類コギャル属にはとうてい思いも及ばない高尚にして理知的な題名ではないか。

てゆーか、最近ルーシーばっかり立て続けにアメリカノートしちゃって、でもみなさん、ひらのだってここにいます。ここにこうして、静かに存在しています! でもいくらお静かだって・くすん・・・ひらののこと、どうか忘れないで・・・・・
という切ない気持ちから、今回は上記タイトルからも期待できるオトナ限定ハードボイルドエッセイを書いてみることにしました。だからオラオラァ!ルーシーみたいなオコチャマは読むなよ!!

というわけで約2年前、わたくしとぼぶっちはコンドミニアム(分譲マンション)を購入した。その際、ソファ・カバーの新しいのが欲しいね! それにこの広告、ソファカバー全品半額って書いてあるよ!らっきーい! と盛り上がって、「ジェイ・シー・ペニー」(大きなチェーン店)に行った。

ソファ・カバーを選び、第一希望の色じゃないけどそのまあまあOKなワイン・レッドのカバーをレジに持っていき、広告も一緒に提示した。というのは、アメリカの店員さんはあまりしっかりしていないので「ホラホラこれは半額セール対象商品なんですよー」と導いてあげたほうが確実なのだ。

すると、「あ、これ昨日までの広告です」という返事が。
見れば、広告の下の隅っこに極小文字で広告期間が書いてある・・・アメリカの折り込み広告でいつも思うのは、日本のそれのように「何月何日はこの商品がこの価格!」というように、消費者側における広告の目的として一番大事な「何月何日」のところを意図的とも思えるほどひた隠しにしている、という印象を受けることだ・・・・
が、ここはアバウトなアメリカ。もしかしたら期間延長してくれるかもー? と思ったボブが、「一日遅れただけなんだから、半額にしてよ」と明るく頼んだのだ。

そんなこと、しないだろ!? とわたくしは思った。

レジのちょっと太目の若い女の子が
「ちょっと待って・・マネージャーに聞いてくるから」
と言って去って行ったのだ。

そんなこと、するのか!? とわたくしはアメリカの柔軟さにいっきょに期待をかけ、ボブと一緒にレジの前で待った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・
女の子、いっこーに現れない。

他のお客もわたくしたちの後ろに並んで、いっこーに現れない彼女を待っている・・・・・

長い時間がたった後、ボブはそのへんにいた他の店員を捕まえて、同じ話をした。「それはできませんね」と、店員はきっぱりと答えた。それでいいのよ、きっぱり答えてくれればちゃんと定額で買うの、わたくしたち。
というわけでもうソソクサと支払いを済ませ、その場を去ろうとしたときだ。太目な女の子店員が、
てーらてーら
歩いて、レジの近くまで帰ってきたのだ、ハナうたを歌いながら。

・・・・・風とともに去りぬ

で、スカーレット・オハラの女友達が出産する時、お医者をすぐに呼んできて!!というスカーレットの命令を受けたメイドの女の子が、いっこーに急がず、玄関先でハナうたを歌ってブラブラしていた

というあの名場面をホウフツとさせる、ショッキングな光景・・・・・
あんた、マネージャーに聞いてくるって、言ったじゃんか!
だからみんなこーしてあんたの帰りを待ってたんじゃんかよ!
それがなんでそこで何の関係もなさそーにハナうた歌ってるんだよ!

と わたくしのココロは急速に「じゃんかよ」化してしまったのだ・・・・・

アメリカのショッピングシーンにおける心の「じゃんかよ」化は、これだけにとどまらなかったのだ。

わたくしが妊娠7ヶ月だった昨年10月のある夕方、、ルーシーを獣医に連れて行ったらその帰りにルーシーさん、車内のクレートの中でおしっこにゲロ吐きが加わって悲惨な姿になった。(自称スーパー美少女モデルの真実がコレである。)
それで、通りがかりにあった大手ペット・グッズのお店、「ペトコ」に飛び込んでシャンプーしてもらうことにした。

シャンプー・コーナーは他の売り場と仕切られた小部屋になっていて、カウンターがあったが、店員は不在。
それでボブは他売り場に歩いていって店員を見つけ、シャンプーしてほしい旨を伝えた。
ら、店員さんが笑顔で
「あ、もうすぐ係の者が帰ってくるから待っててください」

それで、わたくしたちは、待った。
シャンプー・コーナーには、たぶん近所の韓国系っぽい女の子がゴールデンレトリバーを連れてやってきて、わたしたちと一緒に係の者を待ち始めた。

夕方が夜になり、妊娠7ヶ月のわたくしはずっと立っていると腰が痛くなるは新鮮な空気が吸いたくなるはしてきたので、外に出て少し歩いた。10月のロサンゼルスの夜は、寒い・・・・・お腹は重い・・・・・さらにそのお腹もすいてきた・・・

ついに耐え切れなくなったわたくしたちは、もう一度、他の店員をつかまえて尋ねた。

「あら、シャンプー係は今日はお葬式に行ってて休みよ」

もうすぐ帰ってくるから待てって、言ったじゃんか! 
だから寒くてもひもじくても重くてもこうしてじっと待ってたんじゃんかよ!!


で 少し分野が変わるが

アメリカの病院の従事者は、小売業にくらべてとってもプロフェッショナルでしかも親切だと、わたくしはずっと思ってきた。

のだが
このたび2月にわたくしがアリスという女児を出産し、ロサンゼルスの領事館に出生届を出すことになった。それには医者がサインした出生証明が必要なので、わたくしは前から用意していた様式を、入院中に医者に見せて証明をお願いした。その際、気を利かせたクレバーなわたくしは、母親、つまりわたくしの名前を、日本の戸籍にあるとおりの日本のみょうじで書いてくれるように頼んだ。

そしてその証明書をつけて出生届を領事館へ送ったら
「アメリカでの名前、つまり夫のみょうじが入ったヤツにしてくださいー」
というお電話をいただいてしまった。(注:領事館職員のかたは「ヤツ」などという言葉づかいは実際にはされません)
くくう・・・・・・・・・・

でも、間違いは間違い。わたくしが悪うございました。というわけでボブに頼んで再びお医者にコンタクトを取り、正しい証明をもらうことにした。だが、ここから長い道のりが始まったのだ。

そのポイントは、わたくしたちが利用する病院は、そこの保険に入っている人だけが使う、いわゆる会員制の病院で、妊娠中にいつも検診を受けていた近くのトーランス支部と、じっさいに出産した少し遠くのハーバーシティ支部の二ヶ所に分かれていたことにあった。
ボブは、まず丁寧でオフィシャルな依頼の手紙を医者あてに書き、医者がサインすればいいだけの証明用紙も用意して、近くのトーランス支部にまず出かけた。

すると、
「これを病院間で送りあうこともできるけど、ハーバーシティに持っていったほうが確実ね」と言われたので、ボブは素直にハーバーシティまで車を走らせて書類を運んだ。

すると、
「これをお医者に渡すこともできるけど、今日はその医者が非番だから、別の日に来て直接頼む方が確実ね」と言われたので、ボブは何の収穫もないまま疲れはてて帰ってきた。

・・確実だから持っていけって、アンタゆったじゃんかよ!!



・・・・とこのように、ショッピング等におけるわたくしの心の中は着実にイロイロな方面へ「じゃんかよ」化していったのだが、
そーいえば
ここでフトわたくしは、たいして重要なこととは思われないけれどホントは自分自身を揺るがしかねないような衝撃的な事実に気がついた・・・

それは、日本でだったらキッパリした口調と冷徹なマナコで手短かなクレームをつけるはずのこのわたくしが、アメリカにおいてはどんどん「じゃんかよ」化で心をむしばまれながらも、テヘラテヘラ笑ってきゃつらを許してしまっている、ということなのだ。

それは、いっしょにいるボブがお人よしなのかそれともアメリカの店員職員のこうしたズボラな仕事ぶりに慣れているのか、たいして怒った顔も見せずそれどころか笑顔でいるため、英語がずばやく聞き取れないわたくしはなんとなくその場を同じようななごやかな雰囲気でやりすごしてしまう、ということもあるのかもしれない。

だが、これはまったくわたくしらしくないことなのだ。
これではわたくしはアメリカでわたくし自身の性格で生きているとはずえんずえん言えないのだ。

ペトコよ、教えてやろう。カウンターに「担当者が急用のため今日はシャンプーできません」とカンタンに書いた張り紙を貼っとけば済むことじゃんか、なのよ。

病院よ。教えてしんぜよう。わざわざ時間をかけて渋滞の中を運転させてそのうえ無駄足ふませなくても、電話でちょいちょいっと連絡とって確認してくれればすんだことじゃんか、なのよ。

せめてこういう「じゃんか」を心の中だけでなくきっぱりと表明できるくらいになれば、わたくしもわたくし自身に近づいた・・ということなのかもしれない。

てゆーか?

異国でこんなに性格を鎮めて暮らしている二面性仮面性こそが、実は本当のわたくしなのかもしれない・・・・

(2006.10.9アメリカ時間)

追記: 
ついこないだ、「マイケルズ」(画材と手芸用品のチェーン店)に行った。

「カラーボールペンはどこにありますか?」
わたくしが尋ねると、どこにあるか(やっぱり)知らない若い女の子店員は、付近にいたおばさま店員に尋ねた。
「カラーボールペン? うちには置いてないわよ」
おばさま店員さま、200パーセントの自信を持ってキッパリ返答。

「ごめんなさいね・・」
と言う女の子店員に、
「わかりました、ありがとう」
わたくしは穏やかな微笑を浮かべて歩き去りつつ

・・とかなんとか言っちゃって、ホントはあるんでしょ?

そして探してみると、ホントにカラーボールペンのコーナーがちゃんとあったのだ。

アメリカ・・欲しいものは自分の汗と涙でつかみとる、それが、アメリカ・・・・・

・・って、マイケルズよー、こんな店員使ってると売れるものも売れないわよー

(2006.10.13アメリカ時間)



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ひらののアメリカノート Vol.8